最高裁判所事務総局家庭局が、令和2年3月に出した資料では、
成年後見の申立動機の第一位は「預貯金の管理・解約」です。
実に4割を超えています。
銀行の窓口で、親が認知症だと言ってしまえば、定期預金はおろか普通預金でさえ、下すことは難しくなります。
そして言われる言葉。
「成年後見人を立ててくれれば、貯金は下ろせます。」
その言葉通りに成年後見人を立てることになったご家族ですが、
預貯金の解約のためだけに成年後見人が助けてくれるわけではありません。
親が亡くなるまで、成年後見人は親の財産を管理します。
その間、後見人に対する報酬が発生します。
それも、財産額に応じて月2万円~6万円程度。
それでは家族が成年後見人になればいいじゃないかと思いますね。
でも、現在は家族が成年後見人になれるのは、わずか21.8%。
5人に1人の計算です。
もし、まだ親に認知症の兆しが表れていなければ、「民事信託契約」という選択肢があります。
「民事信託契約」は認知症対策の切り札となりえる制度だと思います。
民事信託契約とは、判断能力がしっかりしている今の間に、財産を信頼できる家族に託して、その人の名義に変えておくのです。
名義を換えるだけで、実際は親のためにお金を使うことができます。
たとえ、認知症になったとしても、財産を託された家族が財産を管理・処分できますので、成年後見制度を使う必要がありません。
もちろん、成年後見人に対する報酬もいりません。
家族の中で問題を解決できます。
成年後見制度を使った場合、毎月のランニングコストがかかります。
民事信託の場合も初期費用はかかりますが、毎月のランニングコストはかかりません。
ざっと表にしてみました。
使う制度 | 初期費用 | 10年間のランニングコスト |
---|---|---|
成年後見 | 10万円~20万円 (専門家に依頼した場合) | 月額2万~6万円 年額24万~72万円 10年間で240万~720万円の後見人報酬 |
民事信託 | 30万円~100万円(信託財産の評価額による) | 0円 |
頼れるご家族がいるのであれば、民事信託をご検討されてはいかがでしょうか。
以下にご紹介する本は、一般の方にもわかりやすく民事信託(家族信託)のことが説明されていますのでお勧めです。